俺にとって豆腐を作るということは生活していく手段で、それ以下でもそれ以上でもない。
趣味でやってるようなアマちゃんではないが、豆腐を極めたとか日本一美味い豆腐だなんて大それた無責任発言もしない。
生活の一部なんだから突飛な事なんか必要ない。
おまんま食えて、周りの人たちの役に立ってればいい。
俺は豆腐屋をやるなど微塵も考えず、大学を卒業してサラリーマンになった。
二年程でお袋に『お父さんを手伝ってあげて』と言われ、見習いとして親父の下の下の職人さんに就いた。
多分心のどこかで薄々分かっていた。いつかはこういう日が来るんだろうと。
ハッキリと頭に浮かぶことは無かったが、不思議とあっと言う間に決心はついた。
ウダウダと考える間もなく3Kと呼ばれる職場で365日働くことや、2世と呼ばれる鬱陶しさや、親父と比較されるプレッシャーなんてものは一気に受入れる覚悟がついた。
諦めた訳でもないし、自棄になったわけでもない。
よしやろうと思ったのだ。
その時『これはDNAだ』と思った。
豆腐屋の血なのだ。
豆腐を作ることが生き抜く手段なのだ。
だから俺は豆腐屋で飯を食っていく。
自給1800円・週休2日・残業なし・経験不問という見出しに飛びついて、合わないだのきついだの誰が嫌いだ彼が嫌いだと言っては仕事の本質や責任の何たるかを知りもせず簡単に放り出していく様な事はしない。
流れる血が許さないから。
今日と明日は2008年と2009年の違いだけだ。
今日も明日も豆腐を作る。
正月くらい休みたいさ。
でもうちは年中無休の豆腐屋なんだ。
俺が選んだ豆腐屋の道なんだ。
よいお年をお迎えください。
20時間後に会いましょう。